JAAS News第48号をお届けします。      
                  シニア社会学会・事務局:2004.7.2.

1.第3回定時総会・大会の結果の概要を報告します
6月19日(土)、第3回定時総会・研究発表大会が早稲田大学・大隈小講堂で開かれました。梅雨の季節でしたが、終日初夏の天候で終始しました。

(1)総会の部:
冒頭、総会の議決権者数は355名、出席者数は193名(開会時出席者:47名・委任状:146名)で定足数178名を超えており総会は有効に成立していることが報告され、桂山理事の司会で定刻に開始されました。濱口晴彦氏(理事・運営委員長)を議長に選出して、5つの議案について都築賢二氏(理事・事務局長代理)から報告・説明がなされ審議が順に進みました。各議案は出席会員の満場の拍手をもって、いずれも原案通り承認されました。

(2)研究発表大会の部:(出席者・97名、内非会員・14名)
「世代間連帯へ小さな一歩−大きな願い」(次世代支援に関するトークショウ)
沖藤典子氏(学会理事・次世代育成支援研究会座長)と岩田喜美枝氏(厚労省前局長・且草カ堂顧問)の対談が約1時間行なわれ、3月に関係閣僚に提出した『「次世代育成支援」に関する要望と提言』の話題を端緒に「1.29ショック」がホットな少子化への問題解決に向けて示唆に富む対談が繰り広げられ、満場の聴衆に充実した感銘を与えたことでした。→下記2に概要報告があります。

「どうなる年金・どうする年金」(マスコミが採点する年金改革)
お昼休み直後に始まったシンポジウムは、袖井副会長のコーデイネターで、毎日・産経・読売・朝日・日経(以上、発言順)の各紙メイン担当ジャーナリストが参加して開かれました。このような顔触れのシンポジウムは前例がなく、各パネリストの忌憚のない見解が披露されたのは圧巻でした。各紙の主張に微妙なニュアンスの違いなどがあり充実感のある内容でした。(詳細は後日ご案内します。)

会員からの研究・事例発表大会
事前に応募のあった6名の会員から多岐に亙るテーマの発表がありました。各氏ともに堅実な調査・考察に満ちたもので、単に発表大会での披露で終わるのは勿体ないとの声が多くありました。

(3)懇親会の部:(出席者・48名、内非会員・3名)
予定されたプログラムがほぼ定刻に終了した後、「大隈ガーデンハウス」で懇親会が開かれ、清家副会長の乾杯音頭で今回の成功を祝いました。桂山理事司会のリードで、遠路参加した会員の挨拶を交えて和気藹々のうちに会員・非会員参加者の交歓が約1時間半続き、全ての行事を無事終了しました。

[総括]
今回の大会は、プログラムの構成・内容ともに好評だったことは事後のアンケートでも浮き彫りになりましたが、それに比し参加者数が少なかったことなどの問題点も残しました。なお、この48号では概括的な報告としましたが、次号ではやや踏み込んだプログラム紹介を予定しています。

なお、学会誌『エイジレスフォーラム・第2号』が総会当日発行され来場の会員に配布しました。来場されなかった会員には追って郵送でお届けする予定です。 
                (以上、事務局・鈴木記)

2.「世代間連帯へ小さな一歩−大きな願い」岩田氏・沖藤氏対談の概要
☆『当学会が提出した提言書について』:次世代育成対策支援法が来年4月から施行される。それまでに自治体、各企業が次世代育成支援のための行動計画を検討・作成する時期に入っており、政治的にも行政上のスケジュールからも、大変良いタイミングで提出されたと思う。また、参院選も年金がテーマではあるが、少子化も大きな争点となるので、一石を投じたとも言える。
☆『女性への生き方支援、仕事と子育ての両立支援についての企業の戸惑いとは』:企業が自発的に取り組もうという気にならない。企業経営上必要という考えを持たず、また国の一方的な考えとして受けとめ自分の問題として考えていない。しかし両立支援は、企業の人材戦略として優秀な人材を失わないというメリットがある。育児休業などはコストのかからない投資である。
☆『男性の育児休暇取得について』:取得率0.33%というが、働き盛りの30代の意識は大きく変わってきている。子育て中の父親への意識調査の結果でも、「仕事と子育て両立」「家庭中心」が全体の2/3を占め、30代の男性は意識と現実のなかで葛藤している。
☆『休業保障40%は他国に比べ低いのではないのか』:休業中は社会保険の本人負担が免除されるので実質50%になる。失業者の最低補償は60%だから、これを上回る事は不可能であり、雇用保険の枠組みの中で考えるとこれ以上は無理。当学会が提言した、新しいシステム(<注>たとえば「(仮称)子育て連帯基金」)の中で新しい財源が確保出来れば40%を越える事も可能ではないか。
☆『新システム創設のきっかけは、自営業には育児休暇がない、また親の職業によって児童手当も違う。子どもの視点に立って平等であるべき、ではないか』:今回の提言書にある、最初に“子どもは未来からの大切な預かりものです”に始まり、 “次世代育成支援こそが、未来の国づくりを目指す「米百俵」の精神です”で結んだ3つの提言は全て骨太であり、最も骨太は「新システムの創設」であり、是非実現させて欲しい。本当に今議論を始める絶好のチャンスである。
☆『子どもの声を誰が代弁するか、サービスの一元化は』:今、子育て支援対策は、1部は国、大半は地方自治体でやっているが、サービスについては市町村から声が挙がらないと動かない。市町村からの声が「フォーカルポイント」なる。したがって子どもの代弁を市町村からの声をいかに大きく出していくかが鍵。「介護保険」も当初は夢のように言われたが、3年でできたことを思い出して欲しい。
☆『03才児までの9割が在宅保育で、母親への負担の軽減について』:仕事を持っている母親は、回りの人々と会話が出来るが、専業主婦には子育ての不安と負担がのしかかり、その負担感が大変大きく孤立しがちである。過去には母親一人が家に孤立して子育てをすることはなかった。多世代共生が大事であり、シニア社会学会の強みを活かせるテーマである。地域で祖父母世代と孫世代が接点をもてる施設を作ることなど地域的支援の仕組みを作る必要がある。
☆『今後の当学会の活動の中での留意していく点は何か』:仕事と子育ての両立は、社員にとっても会社にとっても大事である。また、企業が市場の変化に対応していくには、多様な人材が必要である。会社人間といわれ同じ価値観は持つ人が何人集まっても新しいものは生まれない。これからは多様な価値観を持った人々(男女・子育て・外国人・中途採用など)をいかに多く持つかが企業にとって大切。キャリアにとって子育てはマイナスではなく、子育てで親も育つ。また、子育てを通して地域社会とのつながりが出来、本人にとってもロスはない。子育てだけを議論するのではなく、ワークバランスとして、仕事とそれ以外の生活のバランスをはかるような働き方が大事である。ワークバランスの重要性、子育ての重要性を既に経験されているシニア社会学会の諸兄姉、特に男性から発言していただく事が、企業に対して説得力があり、少子化社会の危機的状況、その中にあっての企業のあり方、働き方を学会として社会に発信していって欲しい。     (武者・記)

3.研究会活動のお知らせ
□「望ましいシニア像」研究会
次回は7月9 日(金)17時から早稲田大学高田牧舎2階人総研会議室で開催されます。テーマは「2分科会の代表者による研究報告」。なお、分科会は研究会(全体会)に先立ち、15時から同一会場で行なわれます。当研究会は、原則として毎月第2金曜日開催となりますので、ご承知おきください。

□次世代育成支援研究会
次回は78()午後6時から、会場は子育てひろば「あい・ぽーと」(外苑前駅、徒歩1分)。テーマ「シニアの社会的孫育て」。講師:雲雀信子氏(NPO法人子育てサポーター・チャオ代表)

ユニバーサル・デザイン・スタディ研究会(UDS
次回は7月8日(木)午後6時30分から、六本木「みなとNPOハウス」で行なう予定です

□ 雇用における年齢差別研究会
6/23の研究会は、森馨一郎氏の前回レポートを更に整理したものの披露とその検討が行なわれました。清家座長も積極的に見解を述べられ、結局、この整理を再整理してより実効のある指標リストとすべく次回に継続検討することになり、森氏からその再整理の試案が提案される予定です。これまでの研究会の経緯から本来目的である「企業のエイジレス化努力の測定指標」を見失うことなく継続していくことになっています。次回は、現在調整中につき後刻お知らせする予定です。参加希望者は事務局までお申出ください。   (事務局・鈴木記)