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第92号をお届けします
           シニア社会学会事務局 2007625

            < もくじ >           ページ1.2007年度定時総会・第6回大会報告と袖井新会長挨拶    1  2.2007年度定時総会・第6回大会参加報告          2−4(「定時総会」「会員による研究・事例発表」を中心に)
3.お知らせ                         4

1.2007年度定時総会・第6回大会報告と袖井新会長挨拶
2007年度定時総会・大会が6月14日(木)東京・市ヶ谷の日本大学会館・大講堂において成功裏に開催されました。
定時総会では、新しい理事が選任され、理事の互選により副会長のお茶の水女子大学名誉教授・袖井孝子氏が第3代会長に選ばれました。
大会では、日本大学大学院教授・坂田壽衛氏(社会保険横浜中央病院名誉院長、産婦人科医、当学会会員)による『エイジング社会を健康で美しく〜男性と女性でこんなに違う』と題した基調講演、昼食時の交流会、午後からはパネルディスカッション、会員による事例・研究発表、最後に稲門グリークラブ・シニア会の合唱により本年度の定時総会・大会を無事終了いたしました。
ご出席いただいた会員の皆様、また運営をサポ−トしてくださった会員の皆様、誠に有難うございました。厚く御礼申し上げます。


この度、シニア社会学会の会長に就任することになりました袖井です。
初代の故木村尚三郎会長、二代目の福原義春会長と大物が続いた後で、三代目をお引き受けするのは、まことに気が重く、責任の重大さを痛感しております。
しかし、シニア社会学会が創設されて6年、いつまでも外部のビッグネームに頼ってばかりではおられません。思い切ってお引き受けすることにいたしました。

超高齢社会である21世紀には、シニア世代も受益者であり続けることは許されません。持てる知識と経験を活かして社会に貢献することが求められています。研究者・産業界・自治体・市民団体が連携して、活力ある高齢社会を構築することがシニア社会学会を結成した目的でした。
もう一度、初心に還って、いま何をすべきかを考え、新たな第一歩を踏み出したいと思います。会員の皆様からの率直なご意見や積極的なご提案を期待しております。
               2007年6月  
                     
袖井 孝子



2.2007年度定時総会・第6回大会参加報告
(1) 2007年度定時総会
冒頭、福原会長より開会の挨拶が行われ、今総会を持って会長職を退任する旨表明がありました。引き続いて、総会の議決権者数は344名、出席者数は194名(開会時出席者:58名・委任状:136名)で定足数173名を超えており総会は有効に成立していることが報告され、武者理事の司会で定刻に開始されました。濱口晴彦氏(理事・運営委員長)を議長に選出して、6つの議案について都築賢二氏(理事・事務局長)から報告・説明がなされ審議が順調に進みました。各議案は出席会員の満場の拍手をもって、いずれも原案通り承認されました。
なお、今次総会は役員改選期に当たり、理事に32氏、監事に2氏が選出され、総会終了後に開催された理事会に於いて、次の役員が互選されました。
(敬称略、五十音順)
 
  長:袖井孝子(新任)

副会長:
清家篤(再任) 高畑敬一(再任) 濱口晴彦(新任)

運営委員:
荒井浩道 大島洋 沖藤典子 川村匡由
坂巻煕 袖井孝子 筑摩孝夫 都築賢二
富田孝好 濱口晴彦 板東真理子 武者
忠子 森やす子 横田安宏 吉竹弘行
  (以上15名)  (黒澤記)


(2)  基調講演およびパネルディスカッション、懇親交流会については、紙面の都合により次号以降に掲載予定です。

(3)  総会・大会に出席して    
□神波紘夫氏(町田)の感想
614日まさに東京地区の入梅宣言があったその日に、「第6回定時総会」とそれに引き続く『エイジング社会の幸福学』をテーマにした研究発表大会が、市ケ谷の日本大学会館で開催された。私は今年2月末に入会し、今回は始めて参加させていただきました。
私の、学会参加のいきさつは以下のようなことでした。以前、ある本の中で、こんな言葉に巡り会いました。「若さは自然の贈り物、しかし年を重ねることは芸術品 / 年齢は、一つまた一つとおなじ間隔をおいて進むのではなく、伸び縮みする。/ 伸縮自在なのが、年齢の特徴だ。」
生憎どなたの言葉だったか、その出典をメモすることを忘れてしまいまして、無断で引用させていただく無礼をお詫びしなければなりませんが、私にとってとてもしっくりと納得のいく言葉でした。私が昨年末サラリーマン生活を卒業した時にこの言葉を思い出して、これから過ごす一年一年を、等間隔な過ごし方ではなく、時に前年の倍の感覚の一年を過ごし、時に前年に比べて凝縮した、shrink to Growの一年を過ごしてみたいものだと考えました。そのためのヒントを得られる何かを見つけていましたら、新聞に『定年後にも欲しい男のたまり場』という記事に『シニア社会学会』があったことを思い出し、入会させていただいた次第です。
ほとんど、否、すべての“第3の年齢”の方々は、人生の成熟期としてそれに相応しい充実した日々を送り、そして“人生の集大成”期(私はあまり適切な表現だとは思いませんが)をもはつらつとして過ごしたいと考えるのは当然です。
まさにSamuel Ullmannの『青春Youth』が多くの人の胸に沁みこみ、深い感動と勇気を与えているのは、その証といえると思います。私は、『シニア社会学会』の会員が329名と知ってびっくりしました。団塊の世代が定年を迎える時宜に照らして考えると大会もまだ第6回であり、これから多くの賛同者が入会されるだろうと楽しみでもあります。

今回のテーマが『エイジング社会の幸福学』でありましたが、個々のレポートがそれぞれに充実していたわりに、全体ではコンセプトが見つけにくかったのは、学会初参加の不慣れさと消化能力の貧しさが原因していたのだと散会後反省した次第です。

□三浦和彦氏(東京)の感想
 人間の細胞寿命130年と承り、平均余命、平均寿命、健康寿命、行動寿命に思いをはせ、また大隈重信侯の唱えた人生125才説(成長段階0才〜25才、その5倍。本多静六林学博士のアドバイスによる)を想起致しました。数十年前から、小生の考えていることは、第2の人生の基軸として、@ボランティア・スピリット、Aマルチプル・アクティビティーズ、Bヘルシー・シンプルライフ、そして、目指すは、@生涯健康(予防にまさる治療なし)A生涯学習(一生涯一書生の心構え)B生涯現役(社会参加、ボランティア活動)、更に、5K(健康+経済+心(生き甲斐)+交流+家庭)の充実=K(幸福)。老若男女共同参画・共生共栄社会の実現を理想としております。                

(4)   会員による研究・事例発表
今回は、3名の会員から発表がありました。

杉浦美穂子さんの発表
出産・子育てによる離職後の再就職が進まないことに対して、実態調査の結果を用いた考察と提言が報告された。制度など仕組みはそれなりに整いつつあるが、中断後の復帰(再就職)が進んでいないのは何故か、という問題意識から“子育て”そのものを見直している。見えてくるのは、労働環境(企業)に根強く残る“終身雇用モデル”であり、今後は更にモデルの変更を具体化することが必要である。キーワードは、「頑張る女性を支援する」こと。

駒宮淳子さんの発表
増加する定年退職者の“地域デビュー”について、千葉県我孫子市で実施された「地域インターンシップ事例調査」を通じての考察であった。調査は我孫子市主催のインターンシップ事業に参加した対象者からピックアップした17名に対する面接によって行われた。地元自治体が行う事業に対する事前の参加促進意識には「内因(気持ち)」と「外因(状況)」があり、参加結果は「欲求不満」と「自尊欲求」のバランスが満足の度合いに寄与している。定年退職後の地域デビューにとって、現役時代の肩書きは不要であり、趣味など各人のパーソナリティを尊重した対等な関係を受け入れることが重要である。自分が変わることで世界(環境)が変わることになる。

高橋俊彦さんの発表
いくつかの自治体と共同で行われた定量調査データに多変量解析を適用した分析結果の報告であった。分析アプローチは、健康に対する生活習慣要因の因果関係を定量的に明らかにしようというものであり、その目的は、高齢化と健康・QOLの構造など加齢による健康変化をみようとするものである。そもそも、「健康」の定義そのものに厳密性(客観性)が共有されていないという現状を認識する必要がある。とくに日本では個人の肉体・精神に限定されており、環境との関わり(社会的要因)が欠落している。今後は「社会生活モデル」研究による新しい健康科学EBH(Evidence Based Healthcare)展開が望まれる、という提言で締めくくられた。             (鈴木昭男記)

□森本賢幸氏(川崎)の感想
杉浦美穂子氏は、特定社会保険労務士の立場から、IT関連中小企業の実態報告の中で、将来の労働力確保に備え、特に女性の能力を最大限に引き出す就労環境の整備と支援の必要性を強く訴えた。男性を含めた育児休暇など制度としては整ってきていても、実態はどうなのかを分析し、働く女性の未来を前向きに予想した。
駒宮淳子氏は、子育て、再就職後、さらに大学に入学し大学院で「高齢者の社会参加」をテーマに研究し、今春応用社会学研究科を卒業され、その修士論文を紹介された。社会福祉士の立場から、シニア世代の社会参加と自立を目指した「地域デビュー」プログラムなどの開発を目的に、具体的に我孫子市の「地域インターンシップ」の参加者の面接調査を行い、その考察結果は @地域の社会資源の整備 A市民活動のネットワーク化 などが課題であるとした。小生の居住する川崎市においても今後全く同様の課題に直面すると感じている。
高橋俊彦氏は、定年退職後全く異分野の都市科学研究科で博士号を取得された。その内容は、数万名の生活実態調査を複数の自治体と共同で実施した「高齢者のQOLと社会参加」に関する研究成果を発表された。多変量解析を駆使して、健康に関する生活習慣要因について疫学的な因果関係についての定量研究は納得のいくものだった。限られた時間ではその一部を伺ったに過ぎないと思われるので、詳細な内容を「エイジレスフォーラム」誌の次号への投稿を期待したい。
今年の発表の三者に共通するのは、それぞれ手法は異なっていても計数的な調査に基づく分析と考察は、今後否応なしに直面する団塊世代の高齢化問題の一端を考えるヒントを与えてくださったという点で有意義であったと思う。

3.お知らせ
(1)<エイジレスフォーラム第5号の訂正について>
エイジレスフォーラム第5号におきまして、下記の如き記載ミスがございました。
「文献紹介」にご紹介させて頂きました清家篤氏には多大なご迷惑をお掛けしましたことを伏してお詫びいたしますと共に訂正させて頂きます。
【訂正箇所】 
 目次 誤「エイジレス社会を生きる」 
    正「エイジフリー社会を生きる」

 本文52頁タイトル 
    誤「エイジレス社会を生きる」
    正「エイジフリー社会を生きる」

 英文目次 
    誤 
Life in the Ageless Society
   
Life in the Age-free Society
なお、第6回大会欠席されました会員の皆様には近日中にエイジレスフォーラム第5号の発送手配を行います。

(2)次回老若共同参画社会研究会
720()17時から19時まで、早稲田大学高田牧舎3階人総研会議室で行ないます。

  当学会理事・次世代育成支援研究会座長 沖藤典子氏

  「平成19年度男女共同参画社会づくり功労者表彰」を受賞。

       授賞式は625日(月)総理官邸で行われます。